2009/09/15

イチローと東京大学のアルバート・アイラー



NTTのCMでイチローがフィーチャーされていてそのコピーの一つが「確かな一歩の積み重ねでしか、遠くへは行けない」
うむ、その通りだなと思い出したのが菊池成孔の「東京大学のアルバート・アイラー」

2004年度に行われた東京大学での一般教養の講義録なんだが、実はあまりアルバート・アイラーは関係ない(笑
「東京大学で」「菊池成孔が」「ジャズを題材にした講義」がキーポイントで、アイラーは普通の人にはワケの判んない音にしか聞こえない一種のシンボルとして使われている訳ですね。

ジャズ(というかアメリカ黒人音楽)の歴史を検証する流れで講義が進み、前期(本では上巻)は主にその歴史を菊池的歴史観で(笑
後期は、ブルース、ダンス、即興、バークリーといったキーワードに沿って講義が行われるのですが、途中さすがに付いて行けない部分もあるけど、ジャズファンに限らずとも興味深く読む事ができると思います。

個人的には即興キーワードがほとんどデレク・ベイリーの話で嬉しかったですね。ベイリーの話を出来る人はもはや周囲にもほとんど居なくなってしまったので、この20世紀最高の音楽家がきちんと取り上げられたことは喜ばしい限り。

最後の方では先日亡くなったジョージ・ラッセルの「リディアン・クロマティック・コンセプト(LLC)」に触れ、それに続いてチャーリー・パーカーの研究で有名な濱瀬元彦氏のゲスト講義で幕を閉じるのですが、ジョージ・ラッセルとLCCは単なる前ぶりで濱瀬氏の講義こそがこの講義全体の目的であり、それがひいては学生たちへのメッセージであることが判ります。

もう、実際に本を買って読んで欲しいのですが、濱瀬氏の講義録の最後はこのような言葉で締めくくられています。

何でも解き明かしているとか、全ての音楽は自分の理論の中で働いているという理論があったら、信用しないほうがいいと思います。しかし、普遍妥当性の追求は正しいのですから、その姿勢を失わずに、同時に、個別的な研究を惜しみなく行うこと。それによって、射程の大きい普遍性を得るしかないのではないかと思います。

いいですねぇ、こういう講義を聞ける学生って。
まぁ実際にはモグリ学生もいっぱい聴講していたらしいですが。ボクもしらばっくれて行けば良かったなぁ。モグリなら無料だし、それに試験を受けなくてもいいので気が楽だ(笑
歳を取ってタフな世界で過ごす時間が長くなるとどうしてもこうしたピュアな気持ちを忘れがちですが、この行を読む毎にしっかりしなくちゃと思います。


で、イチローのCMに使われているコピーからこの最後の締めの言葉を思い出したというわけです。
たぶん根本的には同じことを言っているのだなぁと。

あ、最後に菊池成孔のユニット「スパンク・ハッピー」の動画を貼っておきます。
右側で踊っているのが菊池氏です。
(ちなみにスパンクは2006年にSparks(!)の前座として野宮真貴をフィーチャーしたライブが最後の活動。締めくくりライブが最初のスパンク体験だった...)