2009/11/27

History of Music Business


前々から、これからのミュージックビジネスがどうなって行くのか考えている。

音楽を生み出す社会の背景やテクノロジーの進化が、特に大衆音楽にどのような影響を与え、音楽を生活の糧にするためのいわばビジネスモデルがどのような変遷を辿ってきたか、自分なりに次のように考えている。
なお、時の権力者によって保護されたり、権力あるいは宗教者の権威付けに利用されるような音楽についてはまるっきり想定していない(笑

読んでもらえば判るが、基本的により多くの人に音楽を届けるためにシステムとテクノロジーが使われているし、それによってどんどんビジネスの規模が拡大している...というのが大前提。

まず近代市民社会成立以前。
この時代のプロフェッショナルな大衆音楽家については正直良く判らない。
おそらく吟遊詩人とか笛吹きなどの大道芸人、日本であれば琵琶法師とか瞽女などが該当するものと思う。
演奏活動は市や街頭など。
観客は少数。(もしかしたら戸口など1あるいは数名程度を相手にする場合も)
観客が演奏を聴く動機は、単なる偶然居合わせたか、狭いサークル内での知名度による。
料金徴収は投げ銭。
収入は 演奏回数×平均観客数×平均料金
コストは基本的にゼロ。
従って収入が人の生活費を上回れば生きて行ける。

これが、市民社会が生活し娯楽がビジネス化することで、「公演」が成立するようになる。
演奏活動は劇場、飲食店など。
観客は数十〜数百人。
ここで始めて観客が「演奏を聴く」という明確な動機を持って公演場所に足を運ぶようになる。
料金徴収は入場料。
収入は 演奏回数×平均観客数×平均料金。
ただし、興行主が介在するようになってくるとコストとして興行主への支払いが発生するが、実際にはミュージシャンへの”ギャラ”という形をとる。

さらに交通網が整備してくると、ミュージシャンが短期間で各地を回ったり大陸間を移動して演奏活動を行うことができるようになる。つまり「ツアー」が成立するようになる。
演奏活動は劇場、飲食店など。
観客は数十〜数千人。
料金徴収は入場料。
収入は 演奏回数×平均観客数×平均料金。
また遠くの地で集客するためにプロモーションが必要になりそのためのコストが発生する。

20世紀に入ると「コピー」により演奏家が各地に行かなくとも、観客も演奏場所に足を運ばずとも、「演奏を聴く」ことができるようにった。レコードの誕生である。
演奏活動はスタジオ。
観客は数千人〜数百万人
料金徴収はレコード販売。シングル、SP盤など。単価は最終的に数百円。
収入は レコード売上げ枚数×平均料金×ロイヤリティー。
コストとして録音費用、レコード制作コストが新たに発生するようになった。
また、並行して観客を前にしたライブ演奏も引き続き行われるが、その主な目的はレコード販売の宣伝活動である。

さらに1967年、ビートルズが「サージェント・ペッパーズ」を発表し、複数の曲から成るアルバム単位での販売が主流になり、その単価の高さから音楽がビッグビジネスとして成立するようになった。
演奏活動はスタジオ。
観客は数千人〜数百万人
料金徴収はレコード販売(ただし単価はシングル時代の数倍)
収入は レコード売上げ枚数×平均料金×ロイヤリティー。

1980年代に入ると、メディアミックス、マーチャンダイズ販売が一般化し、現在に繋がるミュージックビジネスの原型が出来上がった。
特にミュージシャンをキャラクター化することでマーチャンダイズが可能になったことが大きい。その代償としてミュージシャンがスターシステムに順応することを余儀なくされているワケだが...
演奏活動はスタジオ + ライブ
観客は数千人〜数百万人
料金徴収はレコード売上げ
収入は レコード販売枚数×平均料金×ロイヤリティー + マーチャンダイズ + 二次利用料 + ライブ収入

特に2003年のiTunes Store以降、状況が一変した。
演奏活動はスタジオ + ライブ
観客は数千人〜数百万人
料金徴収はレコード売上げ + ダウンロード課金
収入は レコード売上げ枚数×平均料金×ロイヤリティー + ダウンロード回数×100円×ロイヤリティー + マーチャンダイズ + 二次利用料 + ライブ収入
ただし、レコード販売枚数は激減している。

言うまでもないが、いつの時代でも公演だけで生活しているミュージシャンもいるし、全くライブ活動をせずにレコードを制作するだけのミュージシャンもいる。

こうして振り返ってみると、これからの音楽業界のビジネスモデルが見えてくるのではないだろうか。
シングル曲を無料あるいは小額でネット配信しプロモーションとし(コストも最小限で済む)、
プロモーションを兼ねたライブツアーを行い日銭を稼ぎつつマーチャンダイズで利益を確保し、
アルバムをパッケージあるいはダウンロードで販売しさらに利益を確保する。
ビッグビジネスとして音楽をやって行くには、もはやこれしかないような気がする。

あるいは、
初期の吟遊詩人の時代がそうだったように、納得のいく音楽を制作し、
ネットワークで少数の理解者に直接販売し費用を回収する。
あるいは、
ロードに出て各地の観客から直接演奏費用を回収し、
その音源をネットワークで少数の理解者に直接販売し費用を回収する。
といった生き方も可能だろう。
特に全世界を相手にした場合、「少数の理解者」が数万人オーダーであることも稀ではないので、それだけで十分ビジネスになるだろう。